第1回・引用、前フリ問題の提出について

「クイズの杜」開設一週間、既に様々な方にご活用頂いております。本当にありがとうございます。
さて、サイトオープン一週間にして、3回も同じような質問を受けました。それは、

  • 「私が行った企画問題は、3割が自作、7割が他の問題集からの引用です。このような問題を提出してもかまわないのでしょうか?」
  • 「私の問題は、他人の問題に前フリを付けたもので、問題文の7割は他の方の問題文を参考にしています。このような問題を提出してもかまわないのでしょうか?」

という質問です。これについて、私個人の考えを述べたいと思います。

私個人としての答えは

  • 「ぜひ提出して下さい。少なくとも、私は提出します。」

です。

この問いに対しては、「提出する価値があるか」という観点と、「著作権に抵触しないか」という観点の、2つの側面があると思います。この2点について、私の考えを述べたいと思います。

「提出する価値があるか」という観点

これは私個人としては「十分に価値がある」と判断します。
前者の例であれば、3割は自作なわけです。また、後者の例では問題文の3割は新たな要素が加わっています。この時点で、「問題群」として十分提出する価値があると考えます。
また、「引用である」部分にしても、どういった問題が引用されやすいのか、どういった問題が「ベタ」としてよく出題されるのかなどが、情報として残ります。また、企画者がどのような出題順を選択したか、これも重要な情報です。
ですから私としては、例え全問引用であったとしても、掲載する価値は十二分にあると思っています。

著作権に抵触しないか」という観点

さて、「掲載価値はある」という意見を述べたところで、「著作権に抵触しないか」について考察してみます。
クイズと著作権*1の解釈によれば、「人の問題を引用したり、改題したりするには、著作者の許諾が必要」とのことです。というわけで、クイズが著作物であると仮定すれば、著作権に抵触するといえるでしょう。

「クイズは著作物である」と仮定すると・・・

さて、「クイズは著作物である」と仮定し、これを100%遵守せねばならない場合、どういうことが起きるのでしょうか。

  • 「何故山に登るのか、と聞かれ、そこに山があるから、と答えた登山家は?(答え・マロリー)」

という典型的な既出問題があります。この問題を大会で出題しようとした場合、「公衆」の前で口述することになりますから、この問題を初めて作った人、その後改題した人全員に許諾を得る必要が出てきます(少なくとも、作成にあたって既出であるという事実を知っていれば)。一体誰が最初にこの問題を作り、何人の人が引用したのでしょうか?長戸本(市販されているクイズ本です)に載っている「マロリー」ですら、おそらく三次著作物くらいと予想されます。その許諾手続きは気が遠くなる作業といっていいでしょう。

  • 「(前フリ略)ロシアの革命家ネチャーエフが起こしたリンチ殺人事件を下敷きに作られたドストエフスキーの作品は何?(悪霊)」

という問題にインスピレーションを受け、

  • 「(前フリ略)内部対立からメンバーのイワノフを殺害する事件を起こしたロシアの革命家で、ドストエフスキーの『悪霊』に登場するピョートルのモデルになったのは誰?(ネチャーエフ)」

という問題を作ったとします。既出の問題にインスピレーションを得た、という時点で、その問題の作者に許諾を得て出題しなければならない可能性があります(どの程度までが「改題」の範囲になるか、という点に議論の余地はありますが)。不特定多数に配る会報にその問題を載せるなら、許諾を得ることは必須となります。さらに、仮に「悪霊」という問題を作った人が他の問題にインスピレーションを得ていたら、「ネチャーエフ」は三次著作物になりますから、一次著作者、二次著作者両方に許諾を得る必要があります。

暗黙の了解

今までクイズの世界で、こんなことは真面目になされてきたでしょうか?少なくとも、私はいちいち許諾を取っている人を見たことがありません。
これは、
「非商用目的の趣味でクイズをやっているならば、人の問題を引用したり、改題したりするのはある程度自由」
という「暗黙の了解」が、これまであったからのように思います。

テレビ局の解釈

では、「クイズの商用利用」の場合はどうだったのでしょうか?クイズ番組を制作するテレビ局は、「クイズは事実の羅列なので、著作物ではない。」という見解を示しています*2
これは事実そうなのかもしれませんが、もしかしたら「クイズが著作物だとしたら、番組を作る上での手続きがとてつもなく大変なことになる。」ということふまえて作り出された、テレビ局・クイズ作家同士の「暗黙の了解」なのかもしれません。

クイズの杜としてのスタンス

「クイズの杜」では、「レベル2以下許諾」をデフォルトとして採用しました。このレベルでは、「非商用なら改題してかまわない」ことになっております。これは「暗黙の了解」を踏まえての設定です。

ただし、人によっては「たとえ趣味の範囲であったとしても、問題の無断引用・改題は許さない!」という方もいらっしゃると思います。
「クイズの杜」では、著作者から
「クイズの杜にアップされたこの問題は、“明らかに”無断引用or改題であり、許容できない。」
というクレームが付いた場合、その問題を「クイズの杜」から削除する方針を取ります。

ただ、後から削除するのは色々とトラブルの元になると思いますので、「問題の引用・改題は許さない」という方には、ぜひとも公開時点で主張を明確にしていただきたい、と個人的には思っております。 

私個人の意思表示

というわけで、私個人の意思表示をしておきます。

私が作った問題は、ドンドン引用・改題してかまいません。私は引用・改題された自分の問題を発見すると、「お、自分が(多分)最初に作った問題が、これだけ流行っている!」と喜んじゃう脳天気な人間ですし(笑)。ですから、私が問題をアップするときは全て「フリー」で行います。

ただし、私が「クイズの杜」にアップした問題には、引用・改題問題も含まれています。その問題を引用する場合「三次利用」になるので、本当は二次著作者である私だけでなく、一次著作者である別の方から許諾を得る必要があります。それに関しては大変申し訳ないのですが、「ネットに暫く一般公開してもクレームが付かなかった」という時点で「一次著作者から許諾を得られた」という形とさせて頂きます。いわゆる「事後許諾」「著作者本人が見ていない可能性がある」と言うことで本来は望ましくないのですが、個人の趣味レベルで作っている非商用ページの「クイズの杜」としては、それ以上の処理はできません。ご了承ください。

おわりに

最後に皆様にお願いがあります。こちらでも述べましたが、クイズの杜にアップされた問題に対して、「○○氏の問題はパクリが多い」「○○氏の問題は、既出問題の前フリを少し変えた画一的なものばかりだ」といった批判を、公の場(ネット上など)でしないようにお願いします。善意で問題提供した方が傷つくような事態が多発すると、「全国各地から、気軽に企画問題を提供・享受できる状況を作ろう!」というクイズの杜の精神が達成できなくなってしまいます。上記の私の考えに基づき、ご本人に無理を言ってアップをお願いしている場合も多々ありますので、その辺をご了承下さい。問題を引用・改題された作者ご本人からの削除依頼メールはクイズの杜にて受け付けておりますので、宜しくお願いいたします。

なお以上については、私の個人的意見であり、まだまだ議論の余地があると思います。ご意見がある方は、是非ともコメントをお願いいたします。

*1:東大OBの水谷さんが書かれた文章です。クイズの杜開設前に、水谷さんからは公開レベル設定に関して助言を頂き、さらにご自身の問題をフリーで提供して頂きました。ご協力、感謝致します。

*2:以前ある方がテレビ局に電話した際に得られた回答です